2021年
8月9日
旧借家人・株式会社ジーコと平出恵津子は、ビューロー改代101を令和3年8月13日から2年の普通借家で契約。

2022年
5月30日
オーナーチェンジ。宅建業専門の不動産会社「株式会社ATC」(代表・レオパレス21創業者 深山祐助氏)が新オーナーに。
旧賃貸人株式会社ジーコから新所有者株式会社ATCへ「従前からの賃貸借契約の承継」を前提として売買契約が成立。
(乙2

6月2日
「本日、お伺いしましたがご不在でした。お知らせしたいことがございますので、ご連絡をお願いします」のお知らせがポスティング。
電話でATC社員・小木曽氏より、「11 月には取り壊しを行うので、立ち退いてほしい。つきましては次のお部屋などのご相談をしたい」と「退去通知」を口頭で伝えられる。

6月13日 
ATC渉外担当の小木曽氏、賃借人の「無償の代理人」・後藤氏と本人・平出氏の三者協議。「(6ヶ月後の)11月までには建物を取り壊す。建物買い取り時からの社としての決定であり、撤回はしない。」との説明。解約申し入れをされる乙1号証・小木曽氏の了解を得て協議を録音記録した音声(約30分(字幕付き静止動画です))
平出氏、「ビューロー改代に変わるお部屋は見つからない。今後も賃貸管理してほしい」と伝える。

6月15日 
小木曽氏の解約申入れについて・後藤氏より株式会社ATC代表取締役社長・深山祐助氏宛にに内容証明郵便で抗議を伝える。(甲14号証・全文

6月29日
神谷法律事務所から上記ビューロー改代の賃借人との対応をATCから依頼された通知書(受任通知)が届く。
「本状到達後速やかに、貴殿(後藤氏)より当職ら宛にご連絡いただけますと幸いです」という原告代理人の求めの通りに、その当日 29日に後藤氏から原告代理人弁護士事務所に電話をかけている。原告代理人弁護士・島田氏とやり取りをした。電話の中で、後藤氏は「話し合いたい、あるいは調停をというのであれば、応じても構わない」との旨を冒頭ではっきりと伝えている。そこで「ただし、会社を代表する者からの甲 14 号証への書面の回答は頂くことが前提である」との旨を伝えている。「もちろん、その内容にもよるが、話し合いたい調停をしたいというなら、それが最低限の誠意である」という旨を伝えた。

7月8日付
神谷法律事務所からの「ご連絡」(特定記録郵便)神谷法律事務所より、6月15日付けの内容証明郵便(甲14号証)に返答ができないことの連絡、また、立ち退きの「合意書」案が同封されてくる。合意書には「必要経費」として敷金返済・新しい賃貸契約の際の必要経費(敷金・礼金・前家賃・仲介手数料)、引越し代が支払われると記載。

7月19日
「無償の代理人」・後藤氏より神谷法律事務所へ
「話し合いの姿勢も見せずに一方的に合意書が送られてくる」ことに遺憾の意を示すFAX送信。

7月20日
神谷法律事務所より「今月中に(つまり僅か10日程の間に)、立ち退きに向けた何らかのご連絡をいただけなかった場合、調停の申立てをさせていただく予定です。調停となった場合には裁判所から平出様へ直接連絡がいくことになりますので、あらかじめご承知おきいただきますようお願いいたします」とのFAX。

7月21日
無償の代理人」・後藤氏より「平出恵津子さんが求めているのは、どのような瑕疵もない賃借人として賃貸借契約に基づき住み続けたいという一点だけです。最大の焦点は、賃貸人から“正当事由”が示されるどうかである。」
「調停の申立てを行うとのことですが、もしその書面による回答(借地借家法におけるどのような内容の正当事由があるのか)が無い場合は、調停の呼び出しが来ても拒否します。」旨、FAX送信。

9月末
東京地方裁判所より「来年・2023年8月12日の更新拒絶と建物明渡請求」の訴状が届く。

・・・(約1年半に及ぶ裁判期日)・・・

2024年
1月31日
東京地裁判決
株式会社ATCからの「更新拒絶と建物明渡請求」が棄却される。
訴訟の焦点は、借地借家法に基づく正当事由の有無。正当事由の評価について、判決文では、

  • 主たる要素について、「原告(株式会社ATC)は、当初から取壊しを前提として本件マンション(平出恵津子さんの住むアパート)を買い受けたものである」
    取壊し後の具体的な計画について何ら主張、 立証はなく、 原告(株式会社ATC)が本件建物を自己使用する必要性は低い
  • 従たる要素(現況等)について、「本件マンションには複数の法令不適合箇所があると主張するものの、いずれも被告を本件建物から退去させなければ是正することができないものであるとの具体的な主張、 立証は見当たらない。」

つまり、一審判決においては、「建物明け渡し請求」訴訟において一番重要となる正当事由について、判決文に「主となる」要素についても「従となる」要素についても、株式会社ATCからは「訴訟を通して、主張・立証すらなされていない」と明記した上で、株式会社ATCの請求が却られた。
 平出氏の実質的な勝訴
(何の為の訴訟だったのか?)→「なぜ負けると分かっている訴訟を起こすのか?」参照

2月13日
株式会社ATCが控訴。東京高裁への上訴審確定。

3月8日
平出氏が附帯控訴。「株式会社ATCが、住人が居る建物を取り壊し前提で買い取り、直後に立ち退き請求を行った『地上げ行為』が違法・不当であることの認定」を求める。

9月5日
東京高裁・第二回口頭弁論にて、「結審」(審理の終了)。
東京地裁・一審同様、株式会社ATCは建物取り壊しによる土地の有効活用を主張するが、借地借家法に基づく最も重要な正当事由の要素である自らの「建築計画」すら主張されなかった。

11月7日
東京高裁・判決言い渡し
一審同様、平出恵津子さんの完全勝訴。(以下の主要な2点につき一審の主張を維持)

  • 主たる要素について、「原告(株式会社ATC)は、当初から取壊しを前提として本件マンション(平出恵津子さんの住むアパート)を買い受けたものである」
    「取壊し後の具体的な計画について何ら主張、 立証はなく、 原告(株式会社ATC)が本件建物を自己使用する必要性は低い
  • 従たる要素(現況等)について、「本件マンションには複数の法令不適合箇所があると主張するものの、いずれも被告を本件建物から退去させなければ是正することができないものであるとの具体的な主張、 立証は見当たらない。」

加えて「地上げ行為」に関して以下の文言で株式会社ATCの主張を厳しく批判

  • (「周辺の物件との競争力に欠けるため賃料を低額に設定せざるを得ないなど経済的効果が十分に発揮されていない現状に照らすと、本件マンションを建て替えるため、被控訴人から本件建物の明渡しを受ける高度の必要性がある」等の株式会社ATCの主張について)
    「控訴人(株式会社ATC)の上記主張は、本件建物を使用する必要性を述べるものではなく、本件マンションの底地(マンションを取り壊し更地にした土地の部分)の有効利用を述べるものにすぎず、これにより本件更新拒絶に正当事由を認めることはできない」
  • (「ビューロー改代」の法令不適合箇所等を是正するために莫大な費用のかかる修繕を裁判所から強制されることは、財産権の侵害である、との株式会社ATCの主張について)
    「控訴人(株式会社ATC)は、不動産の売買等を目的とする会社であり、本件マンションに法令不適合箇所等があることを認識していたか、少なくとも重過失によりこれを認識せずに、本件マンションを購入したものと認められ、本件マンションの所有者かつ賃貸人として、上記法不適合箇所等を是正すべき義務を負うのは当然であって、かかる是正が不可能とは認め難く、これをもって本件更新拒絶に正当事由を認めることはできない」
    「控訴人(株式会社ATC)の財産権を侵害する旨主張するが、独自の見解というほかなく、控訴人の上記主張は、採用することができない」

11月15日
株式会社ATCより「上告断念」の意向。平出恵津子さんの勝訴判決が確定
上告期限の一週間も前という、これだけ早い段階で「上告断念」の意向が示されたことは、「他人事ではない」と全国から声を、想いを、寄せて下さった多くの「市民・住民」にとっての「勝利」

株式会社ATC「上告断念」平出恵津子さんの勝訴確定

上記の判決文を含めて、この訴訟に至る経緯や判決内容、その後の対応も含めて、今後の判例として多くの方々に利用していただけるよう、現在「成果と課題」をまとめています。
以下のページで情報をお伝えしたいと思います。

「柿の木訴訟」にみる「成果と課題」↓

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